2.太陽黒点と天体ダイナモの変動メカニズム
3.コロナ質量放出(CME)の発生と伝播
4.太陽風のモデリングと太陽コロナ加熱
5.太陽高エネルギー粒子の加速機構
6.磁気リコネクションとプラズマ中の自己組織化
7.太陽活動と地球環境変動
1.太陽フレアの機構解明とその発生予測
太陽系最大の爆発現象である太陽フレアは太陽コロナ中に蓄積された磁場のエネルギーがプラズマの運動と熱エネルギーとして解放される現象です。しかし、その発生機構は未だに謎に包まれています。太陽フレアは宇宙や核融合実験装置で発生する様々な高温プラズマの突発的現象とも関係しているため、そのメカニズムの解明は太陽物理学のみならず広く宇宙物理学やプラズマ物理学の重要問題の一つとして位置付けられます。また、太陽フレアは衛星システム・通信機器・電力網などへ大きな被害を及ぼすと共に、軌道上の宇宙飛行士の健康や高層大気の化学組成にも影響を与える場合があります。それゆえ、衛星システムなどの高度な社会基盤を守る共に地球環境の変動を理解するためにも、太陽フレアのメカニズムを理解し、その発生を予測することはとても重要です。
太陽宇宙環境物理学研究室では、最新の観測衛星によって得られた詳細なデータとスーパーコンピュータによる大規模な電磁流体力学シミュレーションを融合させることにより、太陽フレアの複雑なダイナミクスを再現すると共に、その発生予測を実現するための研究で世界をリードしています。(協力研究機関:国立天文台、宇宙航空研究開発機構、情報通信研究機構)
参考資料:宇宙天気予報の基礎となる太陽嵐の最新モデリングについて(プレスリリース)2.太陽黒点と天体ダイナモの変動メカニズム
400年前ガリレオ・ガリレイは望遠鏡を使って太陽表面に現れる黒い模様の姿を詳細に記録しました。太陽黒点の発見です。それ以来、太陽黒点は継続して観測されており、詳細なデータが蓄積されてきました。その結果、11年程度の周期で黒点の出現数が増減すると共に、数十年にもわたってほとんど黒点が現れない期間(グランド・ミニマム)もあることが明らかにされています。こうした複雑な黒点活動変動は太陽内部における対流運動による磁場の再生成過程(ダイナモ)の結果として現れると考えられています。実は、こうしたダイナモによる磁場の変動は、太陽のみならず地球や他の惑星、銀河でも生じていますが、強い非線形性のためにそのメカニズムは十分に解明されていません。
太陽宇宙環境物理学研究室では、こうした複雑な黒点活動と様々な天体ダイナモのメカニズムを探る研究を、データ解析とコンピュータ・シミュレーションを使ったモデリング研究を通して行っています。特に、最新の観測データとガリレオ以来の歴史的観測記録を融合させて過去千年の太陽活動をコンピュータで再現する研究、地球磁場の反転メカニズムを3次元シミュレーションと非線形安定性解析によって探る研究を推進しています。(協力研究機関:海洋研究開発機構)
3.コロナ質量放出(CME)の発生と伝播
太陽フレアなどに伴って、太陽コロナから大量のプラズマ(電離高温ガス)が宇宙空間へ放出されることが知られています。コロナ質量放出(CME)と呼ばれるこの現象は、惑星間空間を超音速で伝播し、激しい地磁気変動などを地球周辺にもたらします。太陽宇宙環境物理学研究室では、太陽表面から惑星間空間までを包含する大規模シミュレーションを用いて、CMEの発生から加速、伝播を連続して理解する研究を実施しています。さらにその成果を実証的なジオスペースモデルに連結し、太陽地球結合システム全体を包含するモデルへ拡張することにより宇宙天気予報へ貢献することを目指しています。(協力研究機関:理化学研究所、東京工業大学)
4.太陽風のモデリングと太陽コロナ加熱
太陽から吹き出す高速のプラズマ流である太陽風は、太陽コロナが100万度以上の高温状態へ加熱された結果生まれます。しかし、様々な理論モデルがこれまで提案されているにも関わらず、コロナ加熱のメカニズムそのものは未だに良く分かっていません。太陽宇宙環境物理学研究室では、太陽地球環境研究所が観測した太陽風の電波観測データをもとに太陽圏全体の太陽風を再現するために必要な加熱過程を電磁流体力学シミュレーションによって探ることにより、太陽コロナ加熱のメカニズムを探る研究を行っています。(協力研究機関:京都大学花山天文台、太陽地球環境研究所太陽圏環境部門)
5.太陽高エネルギー粒子の加速機構
太陽フレアやコロナ質量放出(CME)の発生に伴って、高エネルギーの粒子が大量に発生することが知られています。しかし、その発生メカニズムは十分に理解されていません。また、これらの太陽高エネルギー粒子(SEP)は、地球にも到達し、衛星システムの誤作動や、宇宙飛行士の被曝など様々な被害をもたらす場合があります。それゆえ、太陽高エネルギー粒子の発生機構を解明すると共に、その予測を行うことは重要な課題です。太陽宇宙環境物理学研究室では、太陽フレアやコロナ質量放出の3次元電磁流体力学シミュレーションと高速粒子の運動論シミュレーションを連結したマルチスケールモデルによって、太陽高エネルギー粒子の発生機構を探ると共にその予測技術を向上させるための基礎研究を行っています。(協力研究機関:東京工業大学、海洋研究開発機構)
6.プラズマ中の自己組織化と磁気リコネクション
プラズマはしばしばエネルギー緩和を通して、自発的にその構造を変化させる場合があります。こうした現象はプラズマにおける一種の自己組織化と捉えられており、宇宙プラズマと実験室プラズマに共通した非線形現象です。特に、プラズマの自己組織化においては、プラズマの運動と共に磁気リコネクションと呼ばれる磁力線の幾何学的な構造変化が重要な役割を果たします。太陽宇宙環境物理学研究室では、超高温プラズマにおける磁気リコネクションの非線形過程を数値シミュレーションで探ると共に、宇宙プラズマと実験室プラズマの自己組織化に共通するメカニズムを探るための理論研究を進めています。(協力研究機関:広島大学理学研究科、横浜国立大学)
7.太陽活動と地球環境変動
過去の太陽黒点の記録は、1645年から70年ほどの間、黒点がほとんど現れなかったことを示しています。マウンダー極小期と呼ばれるこの時期の太陽は、黒点数が約11年で増減する現在の黒点とは異なる振る舞いをしていたと考えられています。実は、こうした大極小期(グランド・ミニマム)と呼ばれる太陽活動が極端に低下する時代に地球の気候は比較的寒冷化していたことが報告されています。一方、太陽活動と地球環境の相関を太陽放射や宇宙線の変調によって説明しようとする様々な仮説が提案されています。しかし、未だにどのモデルが太陽と地球環境の関係を正しく説明し得るのか結論づけられていません。
太陽宇宙環境物理学研究室では、特に宇宙線や太陽高エネルギー粒子と雲の関係を探ることにより、太陽活動と地球環境の関係を定量的に解析する研究を進めています。このため、超水滴法と呼ばれる独自の計算アルゴリズムを用いて雲の生成消失過程と宇宙線及び大気電離との関係について研究しています。(協力研究機関:海洋研究開発機構、太陽地球環境研究所太陽圏環境部門)


